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ツナ教VSコンサイコン編・後編

ほとんど完成してたくせに加筆したい修正したいっていうみかんさんのワガママで掲載が遅れました、ツイ学ツナコンサイコン編後編です。
ごちゃごちゃ言うよりもう見てくだされ!!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


第三章

「おはようございます、ケントさん!」
「おはよう。じゃあね」
「待ってください。大事なのはここからです!」
「いつもいつもしつこいよ!」
 朝一番の教室、今日も今日とてこのクラスは騒がしい。
 教室に登校してきたケントに素早く走り寄り、宗教勧誘を始める。
「なーんか、この光景もお決まりになってきたな」
「今小銭数えてるから、ちゃらい声で話しかけないで」
「うぅ……今日寝坊しちゃって、ご飯食べる暇なかった……お腹空いた……」
「あーりんにクッキー作ってあげる」
「待て……この展開は! 小銭はやらせんぞ!!」
「はいどーぞ、あーりん。よしきち、十円玉を三枚もらったよ」
「はえーよ!! あげてねーよ!! 返せよおおおおおお!!」
「この教室、本当騒がしいな。ま、天界の騒々しさに比べれば平和でいいが」
 ガッギィィン!
 のん気に朝の時間を過ごしているところへ、けたたましい衝撃音が響き渡る。
 その正体は、コンサイコンとフリーズツナのぶつかり合いだ。
「ひゃ……ここで始めるつもりなの?」
「止めても無駄だ、あーりん。こっちに避難しておいたほうがいいぞ。俺も小銭をこっちに避難させよう」
 バタバタと教室の隅に避難し、渦中の天瀬とケントから距離を取る。
「ケントさんがその気なら、私も容赦はしません。ツナ様! 力を貸してください!」
 天瀬が手を開いて突き出すと、彼女の周囲に五匹のツナがケントの方に向いて出現した。空中を不気味に浮かんでいるマグ――ツナの画はなかなかに奇妙な光景だ。
 ばっ、と手を横に払うと、そのツナが高速でケントに向かって突進する。
 ケントは一匹目をコンサイコンで叩き落し、二匹目を身体を横にずらして回避。三匹目は腹を蹴飛ばして進路を反らす。四匹目は再びコンサイコンで殴り飛ばし、そのまま五匹目にあてて弾き返す。
 弾かれ、かわされたツナは全て壁や床に当たる前に光の粒となって溶け消える。
「ツナ様を蹴ったり殴ったりなんて罰当たりにもほどがあります! なんてことをするんですか!」
 ツナによる突進攻撃を全て防御された天瀬は、興奮した表情で叫ぶ。
「だったら訳の分からん攻撃をやめたらいいだけだろ!」
 片腕でコンサイコンをくるくると回すケント。その額には僅かながら汗が浮かんでいた。
「やばいな……」
 そうつぶやいたのは、疾風だ。
「どうかしたの……?」
 あーりんが不安そうに尋ねる。
「あいつらのぶつかり合いで……力を得ているやつがいる」
「ちから? どういうことなの?」
「人間同士の争い事は大小問わず、負の感情を生む。それは当然のことだ。俺も誰が争おうとどうでもいいが……今回ばかりは別だ。双方とも止めないとまずい」
「おい疾風、それじゃ分からねえよ。俺の小銭は大丈夫なんだろうな?」
「お前は自分の身を心配しろ。いいか。この学園の下には十中八九、悪魔が潜んでる。多分、俺の力を狙ってるんだろうが、別に俺の敵ではない。が、どうやらこの悪魔は狡猾らしい。学校ってのは、色んな感情が渦巻くだろ? もちろん、負の感情だってたくさんだ。悪魔ってのはそれを糧にして力にするんだよ」
「悪魔だぁ……? 正気か疾風? そんな妄言ならよそで言ってくれよ。あー、俺の小銭がなくなるのかと思ってひやひやした……」
「その悪魔が力をつけると、疾風さんでも勝てないの?」
「分からん。ただ一つ言えるのは、勝てる保証はない」
「おいたふ、お前は信じるのかよ。こんな話」
「信じるよ? だって疾風さん、嘘をついてる感じじゃないじゃん」
「クレイジー過ぎんだろ」
「ちなみにこれは、ハンムラビ法典にも書いてあることだ」
「マジかよバビローーーーン!! ハンムラビ法典ならマジだわ。今すぐどうにかしようぜ」
 ハンムラビ法典に絶対的な信用を持つよしきは、あっさりと手の平を返した。
「よく分からんけど……あの二人をデートに誘えばいいんだな」
「ちゃら」「ちゃらいよみすたん……」「ちゃら奴~」
 とかなんとか言ってる間に、二人の戦いはエスカレートし、黒板をぶち抜いて隣の教室まで戦場と化していた。
「二人ともそこで終わりだー!! 小銭をやるから落ち着けええええ!!」
 ツナとコンサイコンがぶつかり合う戦場に飛び込んでいくよしきち。
「おい邪魔だ!」
「よしきさんどいてください!」
「ダメだ、ここはどかな――ごふっ!」
 キメ顔で二人の間に割って入ったまではよかった。が、威勢がいいだけで争いが止められるはずもない。戦闘モードの二人に、躊躇なく吹き飛ばされたよしきは、床の上を三回転して動かなくなった。
「くっ……来世では……もっとたくさんの小銭が増えてますように……」
「よしき死なないで!」
 くたばりかけるよしきをあーりんが抱きかかえ、安全な場所まで連れて行く。
「いい。ここは俺がやろう。天界の連中に感づかれる可能性があるから……あんまり力は使いたくなかったんだがな……」
 刹那、疾風の背に風が集まっていく。まるで小さなブラックホールような、真っ黒な特異点を背中に宿す疾風。その場所を中心に風が渦を巻く。やがてその風が止むと、彼女の背には漆黒の翼が生えていた。
 堕天使――それは嘘でも何でもないことが、今ここで証明されていく。
 黒く、深く、麗しい。芸術のように洗練された印象を受ける黒翼が一度、大きくはためいた。直後、周囲の机と椅子が倒れ窓ガラスにヒビが入っていく。肌が焼けるような、じりじりとした凄まじいオーラが放たれている。誰も近づくことを許されない――強大なプレッシャーを放つ疾風の姿は、先ほどまでの女子学生のそれではなかった。
「な……は……? あいつ本当に天使だったのかよ!?」
「天使か……今まで天使みたいな女の子は見てきたけど、本物の天使は初めてだ。デートに誘おう」
「この姿も久々だな……さっさと終わらせよう」
 黒翼を生やした疾風は、目にも見えない速さで天瀬とケントの間に入る。
「もう充分だろ。やめろ」
 一瞬にして二人の間に現れた疾風は、宙に浮きながら二人を交互に睨んだ。
「どいてください疾風さん」
「そうだ、あんたには関係ない。これはボクたちの問題だ」
「じゃあ寝てろ」
 言うが早いが、疾風はケントに向かって蹴りを繰り出した。ただの蹴りだが人間離れした速度の蹴りで、当然反応することは叶わず、まともに受けたケントは壁に打ち付けられそれきり動かなくなる。
「次は天瀬、あんただ。それとも、気が変わったか?」
「私はケントさんにツナ教に入ってもらうまで、戦うのはやめません」
「だったら同じように寝ててくれ」
 先ほどと同じ攻撃が、天瀬を襲った。しかし、それを受けて天瀬が気絶することはない。
「なっ……フリーズツナ……!」
 攻撃を受け止めるべく、天瀬の目の前に現れたフリーズツナは、人ならざる身で天使としての力の片鱗を振るう疾風の攻撃も防いで見せる。
 少し怯みを見せた疾風だが、天瀬に向かって両手両足を使った連撃を放つ。
 けれども疾風の攻撃はことごとく、虚空から現れるフリーズツナによって防がれてしまう。どれだけの速度で、どれだけの威力で放っても、天瀬に攻撃は届かない。まさに絶対防御だ。
 疾風の攻撃がフリーズツナとぶつかり合う度、尋常ではない力の余波が周囲に広がる。床は凹み、蛍光灯は割れていく。窓にはまったガラスに至っては、残っている枚数を数える方が簡単だ。
「どうなってる……! 堕天したとは言えども、俺はこれでも天使だぞ……俺の攻撃が全て人間の身で防がれることなど……」
「ツナ様は信じる私を救ってくれるんです。だから、疾風さんがどれだけすごい人でも、私を傷つけることはできません」
「ツナ……は!? そうか……。天使の俺では、曲がりなりにも神であるツナ様とやらには抗うことができねえわけか……」
 天使とは、所詮は神が生み出した下位の存在。神の領域に身を置く存在には、他宗教であっても抗うことはできない。それは絶対の理である。
「天瀬……あんたに俺は勝てないらしい。けど考えてみれば、片方は眠ってもらったしこれで争いごとも、いったん終了だ」
「いいえ、今のケントさんを介抱して恩を売ってツナ教に引き込みます」
 どこまでも貪欲に、ツナを信仰しそして信者を増やそうとする天瀬には、天使の声も届くことはないようだ。
「……あんたの信仰するツナ様とかいう神は、それで納得するのか?」
 疾風は訝しげに天瀬に尋ねる。そんな言葉を聞いて、天瀬が黙っているはずがない。
 しかし、天瀬が口を開こうとしたその時、別の声が割り込んできた。
『面白い力を見せてもらった……ククク……ハハハハ!!』
 血の底から響いてくるような、重たく恐ろしげな声。
「誰だ貴様は?」
『いきなりすげえ力の波動を受けたから何かと思えば、これはこれは天界最強と言われた大天使様じゃないか。俺様は名乗るほどでもないただの悪魔だが……そうだな、アークとでも名乗っておこうか』
「天界最強……ハッ! 昔の話だクソ悪魔。このまま何もしなければ見逃してやろうと思ってたところだ。さっさと失せろ」
『そうはいくかよ。たった今、面白い力を手に入れたところだからな。今の俺様ならあんたも潰せるぜ』
「……やる気なら仕方ない。悪魔の身で天使に歯向かったことを、後悔させてやる」
「疾風さん……? 今の声は……?」
 天瀬の質問には答えず、疾風は教室の窓から飛び出した。黒い翼で羽ばたき、運動場の上空に飛翔する。そこには、奇妙な人影が浮いていた。アゲハチョウのような翼を生やした、全裸……いや、ブーメランパンツのみのムキムキの男性だ。しかし、姿形こそは人間だが放つ殺気は疾風にも負けていない。これが、先ほどの声の主……悪魔アークなのだろう。
『へぇ……あんた、その翼……さては堕天したか。ハハハ! 天界最強の大天使様がどうしてまた?』
「答える義理はない。さっさと死ね」
 言うが早いが、疾風は黒翼を羽ばたかせて悪魔に詰め寄る。両手にはいつの間にか、黒く光る双剣が握られていた。
 猛スピードで接近した疾風は、慈悲も何もなく反応できずにいる悪魔に斬りかかった。
 が、返ってきたのは肉を削ぐ手応えではなく、つい先ほどにも味わった完璧に攻撃を防がれるあの感覚だった。
 見れば、黒色に染まったフリーズツナが出現し、悪魔を守っている。その見た目的にはさしずめ、ダークネスツナと言ったところだろうか。
「貴様……!」
『さっきの人間から負の感情を吸いだす時に、一緒にこの力も手に入れたのだ。どうやら、この力はあの人間だけの特異なものらしいな。少なくとも、誰でも得られる加護ではない……とそんなことはどうでもいい。お前はこの力には抗えないんだろ? じゃあ……潰れろ!!』
 悪魔の周りに数えきれないほどの、真っ黒なツナが現れる。
「チッ!」
 次々と射出されるツナを疾風はひょいひょいとかわしていく。そのかわしたツナは消えることなく、飛んだ先にある校舎や運動場を破壊している。天瀬が使っていた力よりも、凶悪なものになっているらしい。
「かわせば被害が出る可能性が……くそ!」
 突っ込んでくるダークネスツナに、両の黒双剣を使って対抗を試みる。が、ただ力任せに斬りかかったところで、ダークネスツナは止まらない。やはり、悪魔の手に落ちてもその格付は変わらないままのようだ。
「切っても落とせないなら……」
 力任せの攻撃が効かないなら、被害の少ない方向に軌道を反らすしかない。凄まじい速度で飛んでくるツナを、一体一体上手く双剣を使って軌道を変えていく。
『フハハハハハ!! 天使のダンスかそれは!? 滑稽だな! 早くしないと潰れるぜ!?』
 疾風は戦い方を変えた。だが、それはアークに直接ダメージを与えられるものではない。このままでは防戦一方でじり貧になることは、誰の目にも明白だ。
「くそ……どうすればっ……」
 相手の振るう力に、文字通りの格の違いがある以上、アーク本体に決定打は与えられない。
 万事休すか……そう、思いかけていた時だった。
「やめてください!! ツナ様をそんなことに使わないでください!!」
「なに……! こんなところへ出てくるな天瀬!」
 声の方を見れば、天瀬が一人運動場の真ん中に立っているようだった。
『さっきの人間ではないか……ハハハ! この力、感謝しているぞ?』
「そんなことはどうでもいいです! ツナ様を、誰かを傷つけたり物を壊す道具として使わないでください!」『お前がそれを言えるのかよ……』
 悪魔が呆れ気味に天瀬を見下ろし……ニヤリと口角をあげた。
『そんなにツナ様が好きなら……お望み通りツナ様であの世に送ってやるぜ!』
 アークが、すっと片手を挙げると、疾風の方に向いていたツナの内の一体が角度を変えた。その先に捉えるは……天瀬だ。
「ダメだ! 逃げろ! お前には今加護がない! 早く!」
 天瀬に向かって必死に叫ぶ疾風。けれど、それは空しく響くだけだ。
『おせえ!!』
 悪魔の号令で、一匹のダークネスツナが放たれる。天瀬を貫かんと、猛スピードで迫るツナは信者も何も関係なく、貫くことだろう。今更焦っても遅い。もうダメだ、疾風がそう思い、唇を噛み締めたときだった。
 ガギィィィ!! と、どこかで聞いたことあるような音が運動場に響いた。
 そして、今にも天瀬ごと地面を貫こうとしていたツナが、明後日の方向に吹っ飛んでいくではないか。
「……よう天瀬……なんでお前がツナにやられそうになってんだよ……。ツナ様は信じる者に幸福を与えてくれるんじゃないのか」
「ケント……さん……」
 天瀬の前でコンサイコンを悠然と構えるその姿は、先ほど疾風に気絶させられたケントだった。
『な……なぜだ!? どうして人間如きが神の領域にある攻撃を防ぐことができるのだ!?』
 悪魔アークは驚愕に目を見開き、疾風に行っていた攻撃の手を思わず止めてしまう。
 ここが好機……とはならず、疾風すら悪魔と同じ方向を見つめ、戦いを忘れていた。
「そうか……あの武器……間違いない。人間でありながら神の力と打ちあえるとしたら、それは同じく神の力を使っているに決まっている。あいつ……神具なんて振り回してたのか!」
 神具……神々が使っていたとされる道具のことだ。ケントが振るうコンサイコンは、神具の一つだったらしい。
『何が神具だ。使ってるのは人間だろ? この数には対処できまい』
 悪魔の周囲に、先ほど疾風を襲ったのと同じほどの数のダークネスツナが展開されていく。
「ケントさん……」
「動くなよ天瀬」
『潰れろ人間!』
 一斉にケントに向けてダークネスツナが放たれた。常人なら、即座に死を覚悟する光景だ。なのに――。
 ケントはそれを全て、コンサイコンで弾き返していく。周囲には弾かれたツナが、打ち上げられたマグロのように散乱する。
「俺がいくらツナの攻撃を受けてきたと思う? ただ数撃たれる程度じゃ、俺のコンサイコンは鈍らない」
 汗一つかかず、降り注ぐツナを全て撃ち返し、時には脚を使って退ける。コンサイコンを振るうケント自身も、神具の力なのか神格を持つに至っているようだ。
『本当に人間かこいつ!? 数がだめなら……大きさだ!』
 無尽蔵に降り注ぐツナの雨が止むと、今度は特大サイズのツナがアークの上に出現した。
「あの大きなツナ様は……もしや本物の……!」
 目を輝かせ、空を仰ぐ天瀬。
「ちょ、はしゃぐなって。動くなって言ったろ」
「でもツナ様が……」
「よし、次で終わりにしてやる」
 動こうとする天瀬を宥め、ケントは頭上の巨大ツナを睨みつける。
『人間如きが図に乗るな!』
 一際大きいツナが二人めがけて飛来する。先ほどまでのツナと比べて十倍はあろうかというサイズだ。
 それを、ケントは迎え討つ。
「伊達にコンサイコン握ってないってのを、教えてやる!」
 叫び、疾駆する。落ちてくるツナに向かって怯えることなく、ケントはジャンプした。
「くらえええええぇぇぇ!! ケントスーパースペシャル!!」
 輝きを帯びたコンサイコンを、野球のバットのように振りかぶり、そして振り抜いた。
「ラアアアアァァァ!!」
 コンサイコンと巨大ツナ。特大のエネルギーがぶつかり合い、行き場を失ったエネルギーはその場で収縮し……そして拡散する――眩い閃光があたりを包んだかと思うと、音が消えた。
 小型の核爆発のようなものが引き起こされ、ケントと天瀬の姿は舞い上がった塵により見えなくなる。
 塵に目を覆う空中の堕天使と悪魔……その二人が次の瞬間に目にしたものは、塵を吹き飛ばしながら飛んでくる巨大ツナだった。
『なにぃぃぃぃ!?』
 コンサイコンにより、撃ち返されたツナが悪魔に迫る。
 急いで大量のツナを展開するアークだが、それらすべてを押し潰す形で、巨大ツナは悪魔を巻き込んで空の彼方へと飛んでいった。
「ツナ自体はあの絶対防御には攻撃と認識されなかったわけか……なるほどな」
 塵が貼れると、ケントとケントに抱きかかえられた天瀬の姿が見てとれた。二人とも無事のようだ。
 悪魔の消失を確認し、疾風はケントと天瀬の元へ降りていく。
「ケントさん!」
「ああ、いい……お礼とかそういうガラじゃないから」
 天瀬を離すと手を軽く振ってお礼を断るケントだったが、
「ツナ教に入りませんか?」
 お礼ではなく勧誘だった。
「なんでそうなるんだ! せめて今日ぐらいは見逃すとかそういうところじゃない!? あとお礼の方が先じゃない!?」
「おいもう、今日はいいだろ二人とも。めちゃくちゃだよ……ほんと……」
 疾風があまりにも疲れた声を出すので、二人の争いはそこでいったんの休戦を見ることとなった。

終章

「やばすぎ! 天使つよ! あれだけ抉れてぶっ壊れた運動場は一日で直ってるし、悪魔のツナが刺さってたところは塞がってるし、どうなってるんだよ」
「それが知りたければ、ハンムラビ法典を読め」
「バビローーーーン!」
 校舎及び運動場が一日で直ったことに感動するよしき……。それもそのはず、軽く一年はかかってもいいほどに、戦いのせいで校舎はめちゃくちゃだった。
「というか、よくもまあ誰も怪我してなかったな」
「ボクがでかい草加センベイ作って盾にしてたからね」
「ナイスだったぜ!! でも俺の財布から小銭が消えてたのはどういうことなのかな?」
「よしき……泣かないで」
「あーりんんんん……慰めてくれるのはあーりんだけだよおお! てことで、次はあーりんの財布でおねしゃす」
「あたしの財布!? やだよー!」
 ツナ教とコンサイコンの戦い及び、堕天使と悪魔の戦いから一日。昨日の今日で校舎が再建され、ここ『ぷそ一鯖勢』クラスもいつも通りだった。
 ただし……
「天瀬さんとケントさん、入院だってね……」
 あーりんが悲しそうに言った。
 無事なように見えた二人だったが、やはりあの爆発の中で無傷とまではいかなかった。
 重症になるような傷は負ってなかったのだから、それはもう奇跡と言えよう。
「そりゃそうだろ。悪魔とかそんなもんを相手にしたんだぞ?」
「みすたんも、ちゃら奴なら悪魔ぐらい事前に惚れ落として被害を防いでよ」
「たふさん無茶言わないで。オレは人間専門です」
「そんなことより、放課後みんなでお見舞いいかない? ね、疾風さんも来るでしょ?」
 一人会話に入ってなかった疾風は、ハッとしたように顔を上げた。
「あ……あぁ。俺も行こう」
「決まりー!」
 あーりんの無邪気な声で、放課後の予定が決まる。
 ツイッター学園『ぷそ一鯖勢』クラスは、今日も平和だ――。

「ちょっと看護婦さーん!」
「またケントさんですか? ナースコールは遊びじゃないんですよ?」
「いや遊んでないですよ! あの、ボクの病室変えてくれませんか?」
「それはできません」
 ところ変わって、ツイッター病院……ここらでは最も大きく、医療施設も充実した病院だ。
「ケントさんケントさん、入院してたら学校もないですしここでツナ様のお話を」
 ベッドの横からひょっこり顔を出したのは天瀬だった。手には『ツナ書』と書かれた分厚い本を持っている。ツナ教にとっての聖書みたいなものなのかもしれない。
「ほらこの人! ボクこの人のせいで全然療養できないんです!」
「いいじゃないですか……同じ学校のお友達でしょう? 話相手がいていいじゃないの」
「そんなことないです! 学校は一緒でもボクら友達とかそういうんじゃなくてですね!」
 必死に訴えるケント。それが看護婦さんに伝わったのか、「しょうがないわねえ」と息を吐いた。
「そう、しょうがないんですよ……だからボクを早く別の病室に……」
「ケントさんがツナ教に入るお手伝い、わたしにもさせてもらいますね♪」
「は……?」
 看護婦さんはいつの間にか、天瀬が持っているのと同じツナ書を手に持っていた。
「それでは看護婦さん、ツナ創世期、第二章第七節を読み上げてください」
「――そしてツナ様はこう言われた。ツナあれ!と。すると世界にツナが産まれ……」
「待って待って!? 何これどういうこと!?」
「ケントさん、この病院はツナ教の後援団体の一つなんですよ。つまり、この病院の人はみんな、ツナ教です」
「ボク退院します!!」
 その後、やってきたクラスメイトたちが必死に説得し、ケントを落ち着けたがそれはまた別のお話。
 ついでに、その夜ケントが病院を抜け出し大騒ぎになるのだがそれもまた別のお話。

「『グラウンドで大爆発!! 不発弾か』……物騒すぎるだろ。行かなくてよかった。やっぱり引きこもり最高過ぎる。イヒーーーーー! イヒヒヒヒヒーーーーーーー!」
 昼間からネットニュースを見ているグリフォン。もちろん平日だし、もちろん学校はサボってある。
「まあ、学校が危ないのはさておき、そろそろ顔出しておかないとさすがにヤバいな?」
 自問自答するグリフォン。
「単位とかそういうんじゃなくて……なんかもっとこう……立場というか出番というか、なんかそういうアレで危ういな?」
 発言がメタくてすでに危ういな?
「まあでも、担任の先生から聞いたところによると、もう一人全然学校にこない柑橘みたいな名前のやつもいるらしいし、大丈夫大丈夫。あー腹減った。ソフトフランスの出番だなこれは」
 オーブンに食パンを放り込んで、つまみを回す。
「ふう……。あー、パン焼けるの待つのつら。ん、なんか届いてる?」
 玄関先に一枚の紙が落ちていた。それを拾い上げ、目を通して見る。
「『ツイッター学園体育祭の案内』? 運動会かよぉ。つら。そんなお子ちゃまの遊びは当に卒業したグリフォンには縁がないな?」
 タイトルだけ目に入れると、そこでグリフォンの興味は尽きたらしい。
 その紙をポイッと放ると、オーブンの前に戻っていった。
 そしてタイミングよく、チーンと音が鳴る。
「…………学校……か……あっ! あつっ!!」

糸冬

※この作品はフィクションであり、実在する人物・団体とは一切関係がありません。
よく似た人がTwitter上にいたとしても、それはよく似た人です。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

長々とした文章にお付き合いありがとうございました。
結構加筆しました。寝ずに書いてたので、文章汚くて大分整形しましたね……。
はい、今回も楽しんでいただけたら幸いです。
こんなスローペースですので、今後もゆったりとした気持ちで楽しんでもらえると嬉しいです。というか助かります。頼むから休みを……。
ツイ学についてのお話は、ツイッターでみかんがいる時に出してくれると、記憶にとどめておきます!
それでは。



ケントさんとコンサイコンヤバすぎ。
あとアークさん名前が悪魔に似てるのと、なんかぷそでアゲハチョウの翼つけてたからっていう理由で悪魔にしてしかもすぐ退場させてごめんなさい。大丈夫です、すでに次回の登場予定あります。

| ツイッター学園 | コメント(4)

ツイッター学園『ツナとコンサイコン』前編

『Twitter学園とは』
Twitter学園とは、Twitter民をフューチャーして勝手にキャラづけして勝手に同じクラスにぶち込み、勝手に短編小説化する誠に勝手な企画である。
 
 待ちに待ってたかもしれない、ツイ学更新です!
 前回は寄稿作品の掲載でしたが、今回はみかんの書き下ろしですよ~。
 めちゃくちゃ長くなったので、前後編で掲載させていただきたいと思います。
 また、寝不足の頭で書いてるのでおかしなところなどありましたら、そっとしておくか気になったら一言ください。そっと直しておきますので。
 また、前後編どちらとも、時間がある時に加筆しようと思っています。頭が働かずに文章サボった感あるのでちょっと納得いってなかったり。
 ま、前置きはこれぐらいにしていか本編をどうぞ!


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 ここはツイッター学園。
 その学園の中でも異彩を放っているクラスが『ぷそ一鯖勢』だ。
 詳しくは分からないが、どこかで何かをやらかした人たちが集まるらしい――。

【ツナとコンサイコン】

序章

 夜。
 深夜二時を回った時刻。普通の人間であれば寝ているであろう時間帯だ。
 僅かな月明かりと、ぽつぽつと等間隔に並ぶ街灯ぐらいしか、光らしい光はない。
 常識的に考えれば――こんな時間に出歩く学生はいない。いるとすれば、それは非行的な学生だろう。
 さて、ツイッター学園の校門には一つの人影があった。
「地上に降りてようやく平和になったかと思えば……天界の連中はつくずく俺がのこと好きらしいな……」
 その人影は、夜空に浮かぶ三日月を見上げ、ふうっと息を吐いて肩をすくめた。
 彼女はツイッター学園『ぷそ一鯖勢』クラスの一人、疾風だ。
「いや……この気配、天界のやつらと似ているが、また別の方向の力だな。となると――あぁ……ったく、勘弁してくれ。悪魔なんて面も見たくない」
 誰に語るでもなく、彼女は一人つぶやく。まぁ、ツイッターってそういうもんだし。
「しかし、今すぐにでも俺の目の前に現れるって感じでもないな。今は力を蓄えているのか、それとも機会をうかがっているのか……。どっちにしろ、注意するにこしたことはないな」
 ひゅぅぅ、と冷えた夜風が吹き抜け、彼女の頬を撫でていく。
「……よりにもよって、学園の敷地からこんな気を感じるとは。俺も準備だけはしておくか……」
 それっきり、疾風は学園から興味を失ったのかくるりと踵を返した。そのまま、彼女は夜の街の中に消えて行こうとする。
 だが、
「――チッ。なんか変なのがいやがるな。大方、さっきのやつの斥候か何かだと思うが。あんまり力は使いたくねえな。どうしたものか……」
 殺気を含んだ視線で、夜闇の先を睨みつける疾風。その先には。街灯に照らされた道が真っ直ぐに繋がっている。車も通らないこの時間、そちらの方向に何がいるというのか……。
 やがて、彼女の目線の先から現れたのはふらふらとした足取りの……何かだった。
 いや、人の形はしているので恐らくは人間なのだろう。それでも、「何か」と表現してしまうほどには、人間離れして見える風体なのだ。
 ぼさぼさになった髪の毛の隙間から見える目は生気を失っており、瞳は一点を見つめたまま動かない。
 それに加え、ふらふらとした足取り。カサカサに乾燥した唇は小刻みに動き、何かを必死に呟いているように見える。
 常人がこんな時間にばったり出会えば、見えてはいけないものだと勘違いしてしまいそうな、そんな人間だった。
 人間である、ということが分ったことで疾風は身体から力を抜いたようだ。
 そしてそのまま彼女は、得体の知れない人間がふらふらと歩いてくる方へ、歩みを進める。
「妙なものを纏っているように感じたが、ただの人間か。びびらせるんじゃ――」
 すれ違いざまに、彼女の言葉止まった。
「夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景……夜景」
「――っ!」
 何事かを呟きながら、疾風の横を彼女には目も暮れずに通り過ぎていく不気味な人間……。
「なんだ今のは……本当にただの人間か? はっ……この俺が横に立っただけで怯むなんてな……」
 その背中が夜闇に消えて見えなくなるまで、疾風は目を放すことはできなかった。
 余談だが、謎めいた不気味な人間は片手にコンビニのビニール袋を持っていた。
「栄養ドリンク……なんてあんなやつが必要にするのか? そもそも効果があるのかも分からん。はぁ……人間が一番怖いってのは真実なのかもしれねえな……」
 それだけ言うと、彼女はまた闇の中を歩き出すのだった――。


一章

「よしきー、お前ちゃりちゃりちゃりちゃり……って、うるせえんだけど」
「いやいや、ちゃらちゃらなヤツにだけは言われたくないから」
「ちょっと……二人とも喧嘩はダメだよぅ!」
「あーりんがそう言うなら……」
「いやよしき、あーりんがそう言うならじゃないからな? 今よしきに注意してるところだから。そっちに主導権ないの分かってる? あと、あーりんは後でデートしよう」
「えぇ……えぇ!! デート!?」
「チャラミスタさん、それはツナ説法を聴く会に変更しましょう。あーりんさんもどうぞ」
「ふえぇ……」
 ここがどこか……ということは言わなくてもすでにお分かりだろう。
 ツイッター学園――その中でも特に問題児の集まりと言われている『ぷそ一鯖勢』クラスだ。
「はいはいみなさーん、朝のHRを始めますよ~」
 教室内の喧騒を、緩めの声色で静めたのは、このクラスを受け持っている華先生だ。いや、静まったのは話声だけだ。ちゃりちゃり……というよしきが小銭を数える音はクラス内に響いている。ただ、それはこのクラスに置いての自然音のようなもので、先生はおろか生徒も注意はしない。
 これが『ぷそ一鯖勢』クラス。
「せんせーい、みかちゃんがまだ来てません」
 あーりんが心配そうに言う。
「みかんさんは……あー……今日も夜景になったので欠席だそうです」
「布教したいのにみかんさん、学校に来てくれないから布教できません……カナシミです」
「みかちゃん……」
「あのさ、前から聞きたかったんだけど夜景ってなんなの? そんな意味不明な理由で学校って休めるの?」
 みすたの疑問は最もだ。世界広しと言えども、『夜景になった』という謎すぎる理由で学校を休むのはみかんだけだろう。
「みすたさん……世の中には知らない方がいいこともあるのよ……」
 いつもは柔らかく笑っている華先生の顔が、急にシリアスなものになる。
「……ウィッス」
 ただならぬ雰囲気を感じ(または空気を読んで)みすたはそれで引き下がった。
「さてみなさん、相変わらずみかんさんやグリフォンさんがいませんが、今日は転校生をみなさんに紹介します」
 さらっと華さんは話題を転換し、更にさらっと重要なことを言い放つ。
「転校生だって? またオレのデートの予定が埋まることになるのかー」
「俺の小銭を数える邪魔さえしないんなら、なんでもいいや」
「転校生かぁ……じゃあお祝いのケーキを用意しないとね――女子力解放!」
 ざわわっ、とビリビリとした気が一瞬で教室内に溢れる。その中心にいるのはたふだ。
 それはまたすぐに収まり、通常の空気に戻る。
「たふさん! すごく美味しそうなケーキじゃない!」
 華先生がいち早く、変化に気づく。たふさんの机の上には先ほどまではなかったはずの、フルーツがふんだんに盛り付けられたホールのケーキが出現していた。お店で買えば、それなりの値段はしそうな代物だ。
「あはは……これなら転校生も喜んでくれるかな?」
「きっと喜んでくれるよ!」
「待て待て待て、待てーい! それ、材料は何?」
「え? 何って、よしきくんの小銭を少しばかりと、僕の女子力だよ」
「当たり前でしょみたいに言うなよおおおおおおおおおお!! お金だぞ!? 泥棒!! それ泥棒だから! 分かる!?」
「……おい、うるさいぞ。転校生の紹介だろ。早く済ませた方がいいんじゃないか? 授業が始まる」
 先ほどまで、頬杖をついて窓の外をぼーっと眺めていた疾風が、唐突に口を開いた。
「……俺の小銭ぃ……ぐすっ……」
「よしき……泣かないで……」
 小銭を失い、絶望に打ちひしがれるよしきに、超絶可愛いあーりんが優しく声をかける。その表情、声、仕草、何から何までがベリーベリーキュート。可愛いは正にこの子のためにある言葉だ。断言します。
「あの、ちょっとボク……いつ教室入ったらいいんですかね……?」
 転校生のくだりが全く進まず、痺れを切らした例の転校生らしき生徒の声がドア越しにかかる。
「あ……ごめんなさい。はいみんな、注目! 転校生のケントさんで~す!」
 半ば強引に華さんが転校生を呼び込んだ。
 ガラリ、とドアが開く。入ってくるのは……男子生徒だった。
「ひゃっ……」
 あーりんが、ケントと呼ばれた男子生徒の姿を見て小さく悲鳴を上げた。
 それも無理はない。鋭い眼光は周囲を威圧しているようにも見え、まるで喉元にナイフを突きつけられているような気がしてくる。
 しかし、問題はそこではない。右手に持つ……物騒な武器が問題だった。とげとげと尖った突起の付いたバッドのようなものを、さも当たり前のような顔でケントは持っていた。昔話に出てくる鬼が持っている、金棒を想像してもらえば早い。
 華先生の横までやってくるとケントは、華先生に並んで教室を見渡した。
 一人一人の顔をなんとなく見ているらしいケントの目が、とある生徒のところで止まった。
「……? 私がどうかしましたか?」(この人……ツナ教に入れよう)
 見つめられた天瀬は首を傾げる。
「いや……」(本能がこの人には気を付けろと言っている気がする……)
 対して、ケントはすぐに視線を反らした。
「はい。それじゃ、ケントさん、自己紹介をしてくれるかな?」
「今日からこのクラスでお世話になるケントって言います。えっと……よろしく」
 パチパチパチちゃりちゃりパチパチちゃり……と拍手と小銭の音が混ざる。
「け……ん……と……と」

――ケバブ

「ケントさんの名前はこう書きま――」
 ケントの名前を黒板に書いたつもりだったであろう、その文字を指さしながら喋っていた華先生の言葉が途切れる。
「なんでや!! ケバブ!? なんでこんな時にケバブのこと考えてんの私!?」
「あー、先生。いいですよ。ボクが書きますから」
「ごめんね……ごめんね……」
 目つきは恐ろしく、物騒な物を持ち歩いているにも関わらず、その口調は丁寧だ。意外といい人なのかもしれない。誰もがそう思っていた時だった。
 ズガガガガッ!! っと、ものすごい音が響いた。
 続いて、ドガズガガガッ!! っと何かを削るような凄まじい音が、教室内全員の耳をつんざく。
 あまりの轟音に次々と耳を塞ぎ始める生徒たちが見たのは、黒板に金棒を叩きつけて抉っているケントの姿だった。

――ケント

「ケントです。ただのカタカナですけど、こういうのはちゃんとやった方がいいからね」
 ムチャクチャな方法で名前を黒板に書いた――いや、抉ったケントは何の悪気もなさそうな顔で言った。
 こうして……問題児だらけのクラスに新たな顔ぶれが増えることとなったのだった――。

二章

「この学園、学食も充実してるんだ」
 片手に金棒を携えたケントは、クラスメイトたちと一緒に学食を訪れていた。
 つまるところ、昼休みである。ちなみに午前中の授業はケントが黒板を抉ったので、別の特別教室を借りて行われた。
「おう、そうだ。学食での掟をケントにも教えておくか。いいか、まずはたくさんの小銭を用意するんだ。それから、お釣りが出ないようにピッタリ買う! 分かった?」
「そんなルールねえよ。変なこと教えんなよしき」
 みすたがよしきとケントの間に割って入る。
「ケントさん、オススメはツナ丼ですよ」
「あー……とりあえずカレーにしとく」
 天瀬にツナ丼をオススメされたが、スルーしてカレーの券を購入するケント。
「おいおい!札で買うな!釣りが出るだろうが!!」
「はは……よしきは頭がおかしいから気にしなくていいよ」
 あーりんの可愛すぎる苦笑で、食堂内の空気がいきなり華やかになる。なんなら、華やかすぎる空気に床を突き破って百合が咲くまである。
 そんなやり取りがあって、空いているテーブルに陣取る一向。
 学食にやってきているメンバーは、疾風を覗くクラス全員だ。
「そういえばずっと気になってたんだけどさ、その金棒? なんなの?」
 席に座って開口一番、みすたは一番触れてはいけないようなところに触れる。ちゃらい。このちゃらさを持って、数々の女性を……。
「これ? これは金棒じゃないよ。ボクの家に代々伝わるコンサイコンっていう武器だよ」
「こんさいこん……? なんか野菜みたいな名前」
「コンサイコンを馬鹿にするやつは許さない!」
 やっぱりというかなんというか、地雷を踏んだのか、ケントはみすたの言葉に激昂した。
「ボクはコンサイコンの使い手に選ばれたんだ……。このコンサイコンを侮辱することは、ボクの家全てを侮辱することに繋がる。それ以上バカにするなら、コンサイコンの錆になってもらうよ?」
 みすたの喉元にコンサイコンが突きつけられる。
「いやいや……ごめん、ちょっとしたジョークだったんだ。気を悪くしたなら謝る」
「分かればいいよ」
 ケントはコンサイコンを納め、また椅子に座ってカレーの続きを口に運ぶ。
「この学園のカレー、結構いける」
「ケントさん、ツナ丼の方が美味しいですよ。ちなみにツナ丼をメニューに登録したのは私です」
 天瀬はツナ丼を布教するのに必死の様子だ。メニューに登録したという話は本当で、入学早々にツナ教という謎の団体を引き連れて現れたかと思うと、そのまま校長やら生徒会やらに掛け合い、ツナメニューの提供を約束させた。
「悪いんだけど、ボク、ツナってあんまり好きじゃないんだよね」
「な……ケントさん、それはツナ教を取りまとめる者として聞き捨てなりません」
「何それ? ツナ教?」
「はい。ツナ教とは、」
「あ、天瀬さんの話は聞かなくていいよ。宗教勧誘されるだけだから」
「チャラミスタさんは黙っててください。ツナ教とは、ツナ様という唯一神を信仰する宗教です。このツナ様はもちろん私も信仰し、崇めているわけですが、その様子ではケントさんはツナ様をご存じないと思います。ツナ様は信者に多くの幸福を与えてくれる神様です。信じる者は救われる、そういう神様で――」
「悪いけど、ボクそういう話には興味ない」
 長い演説モードに入っていた天瀬の言葉を途中で断ち切り、ケントは立ち上がる。
「食べ終わったから先に教室に戻っとくね」
「ダメです! 最後まで聞いてください!」
 ツナ丼を口にかき込むと、天瀬も立ち上がりケントを追っていく。
 ちょうど食堂を出たところでケントに追いつき、天瀬がその肩に手を伸ばす。
 その瞬間、チラリと後ろを見たケントが、携えたコンサイコンを真後ろに薙ぎ払った。
「あっ……」
 突然のことに反応できず、声を上げるだけの天瀬。もちろん、そのままでは横なぎにされたコンサイコンをまともに受けてしまう。しかし、そうなることはなかった。
 ギィィン!!
 硬い物同士がぶつかるような、音が大きく響く。
「いっつっ!」
 コンサイコンを弾かれ、その衝撃で腕にダメージを負ったケントは、天瀬の方を振り返る。
 そこには地面に刺さった大きな冷凍されたマグロのようなものが、そびえ立っていた。大きさは天瀬の身長と同じかそれ以上。こんな大きなものが一体どこから……と考えている間に、謎のマグロは小さな光の粒になって、空気中に溶け消えていく。
「なんだ今のは……?」
「ツナ様の加護です」
「ツナ様だ? 何を馬鹿なこと、言ってるんだよ!」
 両手で振りかぶった渾身の一撃。それが、武器も何も持っていない天瀬に襲いかかる。
 けれども、天瀬は怯むことなく自分に迫るケントを見つめていた。勢いのついたコンサイコンが、天瀬の身体を今度こそ吹き飛ばす――というところで、天瀬の目の前に冷凍マグロが出現し、ケントの一撃を受け止める。
「おいおい……マジかよ……」
「私にはツナ様の加護があります。この加護が消えない限り、私を傷つけることはできませんよ」
「本気で言ってる?」
「私はツナ様のことで嘘はつきません。常にツナ様の前では敬虔な信者であるつもりですから。どうですか? ケントさんもコンサイコンなんて捨てて、ツナ様を信じたくなったのではないですか?」
「ボクはコンサイコンの使い手として、こいつを手放すわけにはいかないし、よく分からん宗教に入るつもりもない。冷凍マグロを召喚する力なんて、別に欲しくもないよ」
「マグロではありません。ツナです。フリーズツナです」
「そうかい……」
 気怠そうに答えたケントは、コンサイコンを握る力を弱めた。そして踵を返し、教室の方へと歩いて行く。
 それを呼び止めようとしたところで、チャイムが鳴り響く。午後の授業の予鈴だ。
「……大丈夫だった? なんか、すごいことになってたけど……」
 たふの声に振り向くと、さっきまで一緒にお昼を食べていたメンツが揃いも揃って、食堂の中から覗いていた。
「大丈夫ですよ、私にはツナ様の加護が付いていますので。それよりもケントさん……あんな危ない物を振り回して何をするつもりなんでしょう。一刻も早く、ツナ教に改宗させて救ってあげないと……」
「ツナ教も結構部危ないよね?」
「チャラミスタさんは黙っててください」
「ウィッス」
 この日を境に……ツナ教とコンサイコンの戦いは幕を開けたのだった。

後半へ続く

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